お客様から、フィッシングができるところはないだろうか?という問い合わせをいただいたので、さっそく探してきました。

もちろん町中を流れるシェムリアップ川のほとりでは、あちこちで大人も子どもも魚釣りをしていますが、ほんの小魚しか釣れないし、川の水が泥色でゴミも浮かんでいて、たとえ釣れてもとても食べる気にはならないだろうということで、セイハーが知っている釣り堀を訪ねてみました。

ところが一か所めのところは、おばちゃんが道路沿いで売店を出してはいましたが、釣り堀の方はお客さんがいないので、開店休業状態でした。

もう一か所あったはずだと訪ねたところが、プノンクロム山の麓に拡がるエコパークの中にあって、ウィークデイでお客さんはまばらでしたが、ここはやっていました。

100haという広大な敷地には、特に何があるわけでもなく、季節が過ぎたハス池と、なんとなく花壇、客のいないレストランと、小さな舞台装置もあって、時には催し物などあるのでしょう。雨期の中頃にもなると水位が上がるんだろうなと思わせる湿地帯に木道が作られていて、そこを10分ほど歩いてゆくと、釣り堀、ありました。

釣り堀というよりは、釣り池ですが、こういった草ぶきのあずまやがたくさん並んでいて、どこでも好きなところに場所を定めて、あともまったく自由です。入り口で、釣り竿、といっても、単に竹を割っただけの棒切れの先に釣り糸が下がっているだけの超原始的なものとボール状になった乾燥餌をくれて、たったの1ドル。あと、釣った魚は、1キロ3ドルで持ち帰れるというシステムです。

乾燥餌では食いつかないということで、セイハーがミミズを掘ってきて、まずは15センチくらいの魚を1匹釣りあげました。その後はなかなか動きがなかったのですが、たいくつした彼が外に出かけた隙に、私がその巨大な割りばしのような釣り竿を水面に垂らしてみました。記憶にある限り、初めてのことではないかと思います。

すると、すぐにウキがクイクイ引っ張られたのです。ありゃ、釣れたのかなと思って糸をあげようとすると、もうその引く力の強いこと。こりゃ大物だと、両手で糸を持って引き上げようとするのですが、バシャバシャと水面を打って暴れるので、もう糸はブチ切れるんじゃないかと思ったのですが、セイハーはいないし、どうしていいのかわからないので、えいままよと、強引に引き上げてみました。

それがこれです。名前はわかりませんが、壁に掛かっていた写真を見ると、この池には多いようですが、やっぱり特別に大きいようでした。

床の上で跳ね回って、池に飛び込んでしまいそうだったので、持っていたビニール袋に入れて固く口を縛って、柱の釘に掛けてセイハーが戻るのを待ったのですが、その時に私はこの魚が鳴くのを聞きました。

魚って鳴くんですね。クイックイッと小さな声でしたが、確かにこの魚が鳴いていたのです。魚が鳴くのを生まれて初めて聞きました。観世音菩薩の心を持った私の胸はチリッと痛みましたが、今夜のおかずのことを考えて心を鬼にしました。

しかし、持ち帰っても料理の仕方もわからないし、セイハーが腹が減ったとうるさいので、けっきょくここで調理してもらいました。お腹に大きな卵を持っていたようで、たらこ5つ分くらいありました。もちろんビールやジュース類も頼めて、時間は無制限、ハンモックに揺られて、のんびりまったりすることができ、家族連れや小グループで休日を過ごすには絶好の穴場ではないかと思いました。