しばらく前になりますが、横浜に暮らす古い友人が、家族4人連れて来てくれました。前々から気になっていたけれど、まだ一度も観たことがないサーカスに私も行くことになっていたのですが、あいにく体調を崩してしまってお留守番。それでその横浜の友人が送ってくれた感想を、少し長いですがそのままアップさせていただきます。

「カンボジアでサーカス? Phareの衝撃」      しんのすけ

僕は今回初めてカンボジアを訪れることになった。「アンコール・ワット」遺跡や「キリング・フィールド」は知っていたが、その他のカンボジアの情報は正直あまりなかった。観光ツアーの日程をゆっくり旅本舗にお願いしたのだが、そこになぜか「サーカス」が入っていた。「サーカス?」「なぜ?」と思ったのが正直なところだった。これまでの僕が人生で出会った「サーカス」というのは2つぐらいしかない。保育園の頃みた「キグレ大サーカス」や「木下大サーカス」だ。おぼろげならがその記憶をたどると、ライオンやトラが火をくぐる、熊が球にのる、猿が芸をするなど、動物ものや、高い場所での空中ブランコや綱渡り、バイクが球状の枠の中をぐるぐる回る曲芸や、ピエロのおかしなマイムやギャグなど・・・・そんなイメージしかなかった。その後、サーカスというものは僕の人生の中には登場してこなかった。なので、今回、実際にみるまではそのイメージの延長でこんな感じなのかな?と予想していた。
夜の7:30にセイハーさんが車で郊外のテントまで載せていってくれた。入口前が売店になっていて「サーカスのグッズを売っているのかな?」と思って入ってみると、およそ僕のイメージするサーカス絡みのグッズというものはなく、意表をつかれた。あるのはアーティスティックなグッズの数々。陶器、Tシャツ、スパイス、ジャグリングのお手玉、タイヤや網をリサイクルして作ったバッグや財布・・・頭の中が「?」でいっぱいになった。困惑したような顔をしている僕に対して若い女性スタッフが熱心に早口の英語で話かけてきた。

正直僕は英語のヒアリングが苦手なのだが、およそ熱意は伝わってきた。そこで朧気ながらに把握した内容は、「ここの売店やサーカスの収益は学校の運営に使われている。そして、その学校には多くのアートやパフォーマンスアートを学ぶ学生がいるのだが、その卒業生たちの就労の場をこのサーカスが提供しているのだ。そういう良い循環をこの場がうみだしているのですよ」と。とても誇らしげに語るその女性スタッフの話からは、ただのお金儲けのサーカスではないのだという思いがビンビンと伝わってきた。そんな売店で2,3のグッズを買うと、いよいよ開演時間が近づいたので会場に入った。「おやっ?」と思ったのは意外に小さな会場。昔日本でみた小劇場系の演劇の場をやや大きくしたような場所。動物の檻や、たいまつなどはなかった。空中ブランコや大きなネットなどもなかった。ここでどんなことが行われるのか?すでに大勢のお客(おそらく欧米系の観光客と思しき人々)がぎっしりつまっていたなか、僕たちは予約してあった真正面のVIP席に陣取った。
すると、いきなりカンボジアの伝統楽器の生演奏が始まり、サーカスが始まった。そのあと僕の目の前に起こったことは、いままで僕がみたどのサーカスとも全くことなっていたのでなんと表現してよいのか難しいのだが、僕の乏しいアート体験の乏しい語彙を組み合わせて言うと、伝統音楽と絵画、舞踊、舞踏、ジャグリング、曲芸、アート、コメディーが組み合わさりながら、カンボジアの歴史、仏教的なテーマ、ストーリーを展開していくというものであった。

ライオンもトラも象もなく、空中ブランコや巨大ネットはないけれども、若い人々が、肉体の限りを尽くして、力強く、美しく、時におかしく、真剣に、目まぐるしくパフォーマンスを展開していくその様は、まさに息をもつかせぬものだった。90分の長丁場であったが、まったくダレたり退屈することもなく、気が付くと胸に熱いものがこみ上げたり、目に熱いものが出てきたりして、最後は立ちながら拍手をして感動している自分がいた。まさかカンボジアにきてサーカスに感動するとは・・・とうれしい不意打ちに浸りながら、外はすでに暗闇に包まれていたサーカス会場を後にしたのであった。

一体、このサーカスは何なのだ?ということでネットで調べると「カンボジアの人気サーカス団Phare。ソーシャルビジネスの成功の秘訣はサステナビリティ」

 https://ideasforgood.jp/2019/03/05/phare-cambodian-circus/
という記事を見つけた。記事によればこのサーカスはPPSというNPOが運営しているのだが、NPOを立ち上げたメンバーが興味深い。内戦下の難民キャンプで絵画を描くアートセラピーを体験した9人が結成したという。その後、貧困やDV,人身売買等々などの問題に立ち向かうべく当初はコミュニティースクールとして活動を開始し、現在は学校、サーカスを運営しつつ、貧困問題、教育問題、就労問題に包括してとりくむソーシャルベンチャーに成長しているという。
貧困、教育、就労の問題に「サーカス」で取り組んでいるとは予想もつかなかった!こんな素敵なサーカスに巡り合えた幸運に大感謝!!